家庭犬としてまず何を教えなければならないか考えてみましょう。 

 おすわり、お手、お預け、...それぞれがこれからの生活の中で教えていきたい事ですが、先ず貴方のWANにとっても必要なのがあなた自身の気持ち、考え方です。家庭という一つの群れのリーダーとしてあなた自身が変わらなければならないという事です。犬族は常に群れを持ち、群れで行動するのが習性です。そこには歴然とした秩序とルールがあり、リーダーは常にトップに立つボスでなければなりません。その序列を守るのもボスの仕事です。 「スキあらば上へ」と思うのはどこの世界でも同じこと、序列の下の犬たちは常に上の犬たちを観察しながら上に上がる機会を狙っています。

 貴方のWANも必ず貴方を観察しているはずです。そして犬たちは常に強いリーダーを求めているものです。その事が強いては自分の安全が保障されるからです。WANの前では何時も毅然とした態度を取り安心してついてこれる環境作りを心掛けてください。


 とは言うものの子犬はかわいいんですよね!。どうしても甘やかしがちになるのはどこも同じです。ただこういう気持ちを必ず持ってWANと接して欲しいという事です。
特に女性の方は母性本能のせいかわかりませんが、遊びと躾の区別がはっきり見受けられないケースも時々見かけます。女性の方でもリーダーはリーダーです。自分に甘えることなくしっかりとリーダーの役目を果たしていきたいものです。

 ただ、よくある話ですがなかなか難しいのが家族という一つの群れの中での子供さんと老人の序列の問題です。小さい子供は犬と同じで無邪気です。まだ加減を知らない子供達は、自分の弟と同じようにWANに対しても少々乱暴に扱ってしまうこともあります。「急鼠猫を噛む」。そんな時に追い詰められたら子犬であっても自分の身を守ろうと必死に反撃をします。細く尖った仔犬の乳歯が、まだ柔らかい子供の皮膚に食い込み血が滲むこともあります。
泣きながら母親に助けを求める子供と、面白がって子供身跳びつきズボンの裾をかじって喜んでいる子犬と、序列という意味合いで考えるとどちらがどうなのか難しいところですね。
こんな時子供がどう感じるかというところにポイントがあります。噛まれて痛いし怖いから近づかないようにしようと思うのか、兄弟げんかと同じ、けろっと忘れて噛まれないように一緒に遊ぶかでWANの行動は180度違います。人間は進化という名の中で退化してしまった物も沢山あります。五感、六感という言葉もありますが本来野性の中で常に自分の身に危機を感じながら生活する事で人間とは違う鋭い感覚を持っています。そのいくつかが科学では立証出来ない大きな能力なのです。メディアを通して不思議な能力が数多く伝えられたいますが、我々もそのいくつかを感じさせられることもあります。

 犬は人の心を読むことが上手な動物です。また、よく人間の行動を観察しています。何も言わなくてもその行動を通して人間に訴えたり、人が考えている事を先回りして行動を起こしたりとお前本当かよと言いたくなるような思いをした事もいくつかあります。
前の例でも、子供がどう考えているのか、怖がっているのかいないのかでそのWANのとる行動はまったく違います。それがどう思っているかによってWANに対して間違った学習をさせてしまうケースは沢山あります。怖いから遊ぶのをやめようとか、触りたいけど怖いから恐る恐る手を出してみようかとか、思っただけで犬には分かってしまうのです。
いやなことをされたら、されそうになったら威嚇したり攻撃すればみんな手を引いてしまう、いやな目に会わなくてすむんだなどとWANが感じてしまったらもう手には負えなくなってしまう事はたびたびです。どんなことがあっても気持ちの上で決してWANに負けないこと、常に自分の方が序列が下なんだと思わせる事が大切なことです。

 どんなにおとなしいやさしいWANでも、自分が追い詰められれば反撃をする本能、能力は必ず持っています。それとは違う自分から攻撃をする、自分の方が常に優位を持ち序列も上だと認識してしまえば、躾や訓練だけではなかなか元の鞘に収めることは難しいことです。一歳から一歳半ぐらいまでその本能を出さないように育ててあげればその後でそういった攻撃的な本能に目覚める事は非常に少ないのですが、そのわずかな瞬間を見逃してしまって、アルファーになったり問題行動を起こしてしまう子が、飼い主さんが気が付かないでいるケースがほとんどです。

 また、どうしても動きの鈍くなった老人に対してアルファーになるケースもあります。年をとっているだけにその社会経験も豊富であり、人や動物に対しても気遣いが出来るはずなのにそれがうまくWANに通じないケースもあります。現在社会の変化や進歩に動物たちも同調できなかったり、必要不可欠の中でやむを得ず自分のライフスタイルを変えなければならない動物たちもいます。 同じように八十年、百年前の生活スタイルが現在の社会で通用する訳もありません。年をとった方々も同じ、昔のスタイルでは今の社会に会わない訳ですが、WAN達に対する接し方や考え方も今の子たちには通じないこともあるからです。
WANは自分の所有物ではなく、家族の一員だと言う感覚を持っていただければまた違うWANとの生活スタイルが出来ると思います。
 私のところで預かっている時には本当にいい子、しかし、家に帰ると決まって特定の人に噛み付いたり威嚇してしまう子がいます。飼い主さんも手に負えなくて、こちらで飼ってくれないかと言われて来ました。
 どうしてそうなってしまうのか、いろいろ説明をさせていただいたのですが、もう一つ分かって貰えなく、こちらで頂く事にしましたが。
これは、その子にとって、その家族にとってそれが一番いいことだと感じたからです。
大変失礼な言い方とは思いますが、WANを飼いたいと思う人は沢山います。ただ、その全ての人がWANを飼える人ではないと言うこと、極端なことを言えば犬を飼っている人達の少なくとも三分の一は犬を飼えない人に思えて仕方ないのです。

 いずれにしても飼った以上は最後まで必ず面倒を見てください、それが飼い主の義務です。また、飼う以上はそのWANとの社会生活に当たり、必ずルールを作りそれを守る努力をしてください。

 どんなにかわいい子であってもWANの序列は常に最下位です。毎日の生活の中でもそれを意識させることが大切なことです。
家庭という一つの群れの中での序列をはっきりと教える事が、家庭犬として必要不可欠の条件です。貴方の気持ち、考え方がはっきりしていれば意識して教えなくても自然にWANが覚えてくれますのでご心配なく。ついでに、「始めはしっかりそのつもりでしたが何処でどうくるったのか。と、いわれて改めて教室に来る人も何人

かいたこともお忘れなく。